2016年5月14日研修会を振り返って

テーマ:看護に法医学の視点を 看護実践を確かなものに

講 師:佐藤喜宣氏(杏林大学法医学名誉教授)


フォレンジック看護実践においては、対象者を捉える視点に法医学の知見が必須です。今回、フォレンジック看護の紹介だけでなく、教育にも携わってこられた佐藤喜宣杏林大学名誉教授を迎え、ご教授いただきました。

以下、講演内容についての振り返りです。

まずフォレンジック看護は、死を防ぐ予防的意義があることを再認識しました。

暴力・虐待の被害は、社会で発表されるよりもっと多くの被害者がいる。暴力・虐待は国際疾病分類に位置づけられている。しかし、遺棄、嬰児殺、おき去り、登校禁止(家での閉じ込め)等の被害者は臨床で遭遇することがないので医療者に見過ごされている。しかし、その方たちのなかには、重大で深刻な結果に至るまでに医療機関で手当を受けていることがある。医療機関に、当事者・関係者から状況を引き出す力があれば、また傷を見過ごさない・傷の原因を知ることができたならば、早期に対応できるのである。これら実情について子どもの状況を例に挙げ最新のデータや豊富な画像を用いながら、傷の示す「原因・要因」を見落とさないこと。「生命のクオリティ」を損なわないという医療者の責務を説かれました。

次に、フォレンジック看護は、虐待・暴力の発見者にとどまらず、調整者という役割が期待されているとのことです。上記の子どもの例でも傷の発見ができたにもかかわらず、制度的問題や私的領域への介入というジレンマから救うことのできなかった事例がある。そこにフォレンジック看護師の役割がある。拠点となる病院でフォレンジックナースが被害者・加害者、医療関係者その他関係者の調整を行っているイギリスでの取り組みを紹介してくださいました。

最後に、被害者のSOSだけでなく加害者のSOSも受け止められことが大切だということです。暴力の連鎖を断つには、加害者のケアも重要である。イギリスでは、アルコール依存症の矯正プログラムを適用しながら、加害者への対応を行っており、その成果として、ここ数年で子どもの虐待報告数が減少している。フォレンジックナースの調整によって、加害者も救われるのです。

このように、フォレンジック看護実践の必要性について、疫学的な観点と他国の状況を基に重要な知見とフォレンジック看護実践を発展させる戦略的取り組みについても多くの示唆を頂きました。看護師として法医学の視点をもった確かなアセスメント能力が重要です。またフォレンジック看護は、さらに調整役としての高度な専門技術が求められるということです。現状、看護教育においては法医学的視点を得る場が保障されているわけではありません。フォレンジック看護発展には、理解のある佐藤教授をはじめ法医学者の協力を得ることも大切です。

以上、急な依頼にもかかわらず快くお引き受け頂きました佐藤教授に感謝申し上げます。


IMG_0323IMG_2718[1]

 

 

 

IMG_2723[2]