日本フォレンジック看護学会 設立の趣旨   

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 約70億人が共生するこの地球上で、人間の歴史は試行錯誤を繰り返しつつも人権を尊重し、平和を願う方向を希求しております。1996年に世界保健機関が初めて出した、暴力が健康に及ぼす影響についての声明はその流れの一つと言えます。地域や国家間の紛争、テロ、災害、女性や子ども等への暴力、犯罪、人身取引、自傷・自死等は社会問題であり健康問題でもあります。
日本国内では、近年多くの専門分野が立ち上がり、学術的活動、蓄積は目を見張るものがあります。2000年に入り、「児童虐待の防止等に関する法律」等の関連の法律が制定され行政レベルでの対策が開始されています。これらに前後し、各専門領域の中で、子どもや女性、高齢者への暴力被害の問題について看護の実践・調査研究等が報告され、様々な団体や機関で研修会の機会も増えています。一方で、暴力被害と健康については、共通する視点や学術的知識体系が必要とされますが、包括的に取り組む場が不足しているのが現状です。
海外では、1992年に国際フォレンジック看護協会(IAFN)が設立され、暴力の根絶、実態の把握と予防、多様な被害者支援、専門職者の教育等および実践活動支援が行われています。フォレンジック看護とは、暴力と虐待の被害者と加害者への特別なケアを指します。
特に、性暴力被害者への支援活動として、被害者の面談からアセスメント、証拠採取、適切なケアを行い多職種と連携する「性暴力被害者支援看護師(SANE)」の活動は、北アメリカを中心に広がっています。現在のIAFNは、フォレンジック看護学を軸とし、親密なパートナーからの暴力:DV(IPV)、高齢者虐待、児童虐待、性暴力、人身取引、検死・死体解剖、刑務所(受刑者・矯正教育)、救命救急、メンタルヘルス、災害、公衆衛生等の問題に取り組み高い社会的評価を得ています。
2000年から日本で初めて「NPO法人女性の安全と健康のための支援教育センター」が東京でSANE養成研修を開始し、現在300名を超える修了生がいます。各地でSANE養成の動きがあり、今後ますますその社会的な貢献が期待されます。人の生涯に寄り添う看護師として、国際的なフォレンジック看護の知見および日本での実践を土台にして学問領域として発展させることが必要とされます。
このような社会状況と看護の現状を踏まえ、さらなる暴力の防止とケアに向けたフォレンジック看護に関する臨床・教育・研究の充実をはかることを目的として、学術的に専門性を培う場として発展させるための「日本フォレンジック看護学会」の設立を提案します。

2014年3月29日

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